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斜め45度からの理説

どこにも転がっていない理論や方法論を語ります。

事業を成功に導く、きらりと光る5つのマーケティングセンス

私は仕事柄、様々なビジネスを目にしたり研究する機会がある。
企業の規模に大小あるように、マーケティングもよく考え抜かれた企業もあれば、中途半端な企業も数多く存在する。

日常的に企業や商品に接していると、ごく稀に、卓越されたマーケティングの一端を目にすることがある。あえてそれを「きらりと光るもの」と表現しよう。それに出合うたび、「うまいこと考えたな」「その発想はなかった」と感心させられる。

では、きらりと光るものは何処から来るのか。
実は私自身、それを言語化できなかった。あえて、戦略的あるいは戦術的な理論やフレームワークに落とし込むことはできる。だが、おそらく、そうした類の方法論で導き出された解ではないと私は感じ、理論などに落とし込むのを良しとしなかった。そして、色々と考えを巡らせ辿り着いた答えは、「センス」だった。

「センス」という言葉がしっくりハマった瞬間、それまで言語化できなかったものが少しずつ言葉を紡ぎ出し、形を帯びてきだした。

センスは、きらりと光る瞬間がある。
私はきっとその瞬間を捉え、感心したのだろう。では一体、どの瞬間、どの場面でそのセンスが垣間見れるのか。私が考える、センスが光る瞬間は次の5つだ。

  1. ネーミング
  2. 商品構成
  3. 価格設定
  4. ポジショニング
  5. タイミング


では、1から順に説明していこう。

 

 

1. ネーミング

「名は体を表す」。
“名前はそのものの実体を言い表す”の意の諺だが、これはネーミングでも同じことが言える。センスの良いネーミングは、それだけでコンセプトを表し、直感的にイメージを伝え、価値を伝達する。秀逸なネーミングは見る者の関心を引きつけ、ひいては商品への関心を触発する。

ネーミングのセンスは至る所で表れる。会社名、商品名、店舗名、屋号、事業名、サイト名、SNS(ブログ、Twitter、Facebook)名、肩書きなど。会社名から始まり肩書きに至るまでネーミングは関与する。そして、必ずお客が目にするものでもある。

もしも、人の関心を引きつける秀でたネーミングを随所に命名できたなら、どのビジネスも違った形へと変貌するだろう。それほどの力がネーミングにはある。

有名な事例を少し紹介しよう。
「鼻セレブ」で親しまれているティッシュペーパーは以前「モイスチャーティシュ」という商品名だった。「鼻セレブ」に名前を変えた結果、売上は3倍になった。
「通勤快足」という抗菌防臭加工の靴下は以前「フレッシュライフ」という商品名だった。「通勤快足」に名前を変えた結果、売上は10倍になった。
このようにネーミングには底知れぬ可能性がある。ネーミングは最大の販促コピーと言っても差し支えないだろう。

また覚えやすいネーミングを考案するだけで、WEB集客に一役買う。
消費行動を表したAISAS理論がある。

Attention(注意) → Interest(興味) → Search(検索) → Action(購買) → Share(共有)。

ネーミングはSearch(検索)に影響を与える。商品名などが覚えやすく、変換しやすければ、検索からの流入が見込める。逆に、覚えづらく変換しづらい商品名などは検索されにくい。また、ユニークなネーミングであれば、それ自体が口コミを生むことさえある。

私がネーミングからマーケティングのセンスを見るのは、名前の背景に隠れている想いやコンセプト、アイディアなどを色濃く感じるからだ。コンセプトが伝わる商品名は、その背景にはっきりとしたコンセプトがなければ作れない。イメージが伝わる商品名は、その背景にはっきりとしたイメージがなければ作れない。覚えやすい商品名はWEBからの集客を増やし、ユニークな商品名は口コミを生む。「名は体を表す」を逆に言い表せば、「体の完成度は名に表れる」になる。
商品背景をこれほど露わにするものはネーミングをおいて他に無いだろう。

 

 

2. 商品構成

商品は点で売るのではなく、線で売るものだ。「この商品を買ってもらったら、次はこれを買ってもらう」という風に。そのためには、お客の消費動向を読めなければならない。何の脈絡もなく商品を陳列したり、取り扱っているようではお客の消費を促すことはできない。

ここであるスーパーの事例を紹介しよう。
Aというスーパーでは、粉物商品(たこ焼き・お好み焼き)の隣に、炭酸系の飲料水を陳列した。粉物を食べると喉が渇くため、飲料水も買いたくなるだろうとの思惑があっての陳列だ。結果は、前年月と比べ飲料水の売り上げは14%増、粉物の売り上げは23%増となった。商品構成の妙が発揮された瞬間である。

もう一つ事例を紹介しよう。
実は私の父の話だ。私の父は以前、山の中腹にフランスレストランを建て経営していた。夜景が綺麗なこともあり、来店者の大半はカップルが占めるようになった。来店する客層を見ていた父は、ある思いが浮かんだ。「このままカップルを帰すのはもったいない」と。そこで100mも離れていない場所にラブホテルを建設することにした。結果は、大当たり。部屋数が足りない日が続き、隣にもう一棟建てるまでに至った。

これが商品構成の力である。
粉物や飲料水といった小規模な商品構成から、レストランやホテルといった大規模な商品構成まである(このレベルになると事業構成とも言えるが)。

お客が次に何を求めるのかを読み取り、適切な商品を用意する。次の商品を購入してもらうために、売り手は商品を置く適切な場所を見極め、お客の導線(ストーリー)を描き、消費へと導く。

小説で喩えるなら、商品構成はプロット(ストーリーの大まかな構成)であり、プロットを肉付け(描写・表現)するのが販促活動である。プロットがこけていれば、どんなに肉付けしても秀逸な小説にはならない。それと同じように、商品構成がこけていれば、販促活動をいくらしても足腰の強いビジネスには成り得ない。

優れた商品構成は、お客の消費ストーリーをどれだけ想像でき、描けるのかにかかっている。これも、センスのなせる業である。

 

 

3. 価格設定

「値付けは経営である」。これは、名経営者・稲盛和夫氏の言葉である。
それほど、価格を決めるのは容易ではなく、と同時に重要であることを示唆している。この言葉通り、価格設定は本当に頭を悩ませる。

価格は、市場性や競合との兼ね合い、原価や商品構成などを考慮して決めなければならない。それだけではなく、商品への思い入れや経営哲学などといった主観的な感情までもが影響を与える。数多くの要素が絡み合い、その中から正解を導き出すのは至極難しい。かといって、価格設定をおいそれと決めるわけにもいかない。価格は、市場地図を塗り替えるほどの力を持っており、価格設定をひとたび誤れば、経営を窮地に追い込むことすらある。それだけ市場と経営に多大な影響を与えるのだ。

今話してきたように、価格には多くの背景がある。言い換えれば、価格は数多くの背景を映す鏡とも言える。そのため、価格には値付け親のセンスが見え隠れする。

価格の重要性を示す面白い事例がある。レストランチェーンの『サイゼリア』である。サイゼリアは、お客を増やすために品質の向上よりも価格を安くすることに重点を置いた。3割引、5割引きと安くしていき、7割引きまで価格を落とした途端、連日200メートルまで行列ができるようになったそうだ。サイゼリア会長・正垣泰彦氏は、この価格を変更せずに提供し続けられるよう内部コストの削減に努めた。つまり、コストありきの価格ではなく、価格ありきのコストである。この価格の妙が今のサイゼリアを生んだと言える。

お客が集まる価格を探そうとする発想、そして、見つけた適正価格に合わせてコストを調節するという考えは、頭では分かっていてもおいそれとできるものではない。価格はまさに、マーケティングセンスと経営手腕が表れる事柄と言えるだろう。

 

 

4. ポジショニング

ポジショニングとは何なのか。
私なりの言葉で要約すると、「競合が持っていない、または競合よりも優れている、自社の“強み”を活かした位置に立ち、市場のニーズを満たす」である。
下の図を見てもらいたい。

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このように、競合にはない“強み”で戦うことがポジショニングの重要な点である。
最近よく「ブランディング」という言葉を目にする。正直言って、ブランディングよりもポジショニングのほうが重要である。なぜなら、競合に勝てないポジションでいくらブランディングしても意味がないからだ。ブランディングは、ポジショニングがしっかりと成り立っているうえではじめて意味をなす戦略である。

簡約すると、
ポジショニングは「自社は○○(強み)を売りと決め、差別化を図ろう」であり、
ブランディングは「○○(強み)と言えば、△△(自社名)と言われるよう信頼を勝ち取ろう」である(信頼を勝ち取れてブランドと化す)。
つまり、ポジショニングが定まってからのブランディングなのである。

ポジショニングの好例を紹介しよう。「10分、1000円カット」を売りにしたヘアカット専門店『QBハウス』だ。
私はこの会社を知った時、なんてうまいポジショニングをしたのだろうと思った。理美容店で働く理容師・美容師は皆それぞれプライドを持っており、スピードよりもクオリティにこだわっている。できることなら、高品質・高価格のサービスを提供したいと考えており、そのために日々練習を欠かさず自己研鑚に励んでいる。いわば個人事業主や小規模店舗ばかりの職人市場だ。そこにスピードと低価格を売りにしたQBハウスが入って来た。何が上手いのかと言うと、他の理美容店がガード不可能の角度から攻撃している点だ。
「安くて早い」は、職人としてのプライドが許さないし、何より怖くてできない。また、個人事業主や小規模店舗にはない、組織力や資金力を活かしている。業界心理と業界特有の小規模性を逆手に取った、まさにガード不可能なポジショニングなのである。
市場と競合の中で、自社のポジションをどこに置くのか。競合が嫌がるポジションはどこなのか。ポジショニングは、まさにセンスが大きく反映される事柄である。

 

 

5. タイミング

ビジネスにおけるタイミングには、大小様々ある。
たとえば、花粉症などの季節変動によるニーズの高まり。クリスマスなどの年間行事によるニーズの高まり。法改正などの環境変化によるニーズの高まり。こうしたタイミングを見計らい、商品を販売するのは、商人であれば当たり前だろう。

これらのほかに、参入タイミングがある。
成長著しい業界に参入したり、人気を博している商品を扱えば、瞬く間に収益拡大を図れる可能性がある。成長を見届けてから参入するようでは、えてして遅い場合が多い。成長する業界・商品だと予め見極めておき、成長期に入る前から準備をしておかなければならない。そうでなければ、タイミング良く参入はできないからだ。ただ、これには成長するか否かを見分けるセンスがいる。このセンスは言うなれば“時代を先読みする先見力”である。

経営コンサルタントとして有名な神田昌典氏の著書『成功者の告白』に、「どうすれば成功できるか」という問いに対して、このような一文がある。

タイミングだよ。ビジネスで成功するためには、第一にタイミング、第二にタイミング、第三にタイミングだ。つまり、いつ市場に参入するかが鍵なんだ。参入タイミングさえ間違えなければ、順調に会社は立ち上がる。一度立ち上がってしまえば、あとはエスカレーターに乗せられたように、自動的に売上があがっていく。

 

成長期にはその事業で得られる収益全体の80~85%が得られる。残りの15~20%を導入期と成熟期が分けるから、それぞれ7.5~10%しか儲からない。
成長期には参入しないほうがいいというアドバイスを正確に言い直せばね、成長期の後半は競争が激しいから儲からないよということなんだ。株価が連日ピークと新聞で報道されている時には、すでに高値になってしまっているから、株を買うなというのと同じだね。
ところが成長期の前半に参入するのは、まだライバル会社も少なく価格もさほど崩れていないので、大きなビジネスチャンスを掴むことになる

市場の移り変わりと時代の変化を読み取り、次の一手を打つ。理論やフレームワークなどで易々と予測できるものではない。経営者が持つ先見力(センス)だけがものをいう世界だ。起業後すぐに波に乗れる経営者や鞍替えして成功する経営者は、すべからずこのセンスを持ち合わせていると言える。そんな人たちに出会うたび、「うまいことやったな」と感心させられる。こればかりは持って生まれた商才としか言いようがない。
タイミング、それはマーケティングにおいても経営においても必要不可欠であり、事業成長を左右する重要な事柄である。

 

 

まとめ

マーケティングセンスと銘打って書いた記事だが、私自身、今回紹介した5つはマーケティングのツボだと確信している。そして、センスがきらりと光る場所だと考えている。
これら5つを念頭に置いてマーケティングを練れば、ツボを抑えた戦略が立てられ、センスもある程度は鍛えられるだろう。ぜひ、参考にしてほしい。

 

 

紹介した書籍

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