斜め45度からの理説

どこにも転がっていない理論や方法論を語ります。

時間術はもういらない ~シンプルだけど最強の時間戦略~

時間術を謳う書籍を私は散々読み尽くしてきた。
思考錯誤と実践を繰り返し、私が辿り着いたのは、いたってシンプルな答えだった。これから紹介する答えを、私は「時間術」とは表記しない。「術」と言うほど小手先なものではなく、もっと本質的な、どちらかと言うと戦略に近いものだからだ。そのため「時間戦略」と記す。

おそらく、本記事を読んだ人は「なんだ、そんなことか」と言うかもしれない。それはあまりにもシンプルな戦略だからだ。だが、時間戦略に限らず、物事の本質はいつだってシンプルだ。シンプルだが、単純ではない。そして簡単でもない。

これからお伝えする時間戦略は、全部で三つある。
この三つはそれぞれ独立しているのではなく、一つの線でつながっている。本記事を読んだら、時間術に関する書籍はもう読まなくていい。そう言い切れるほど、強力かつ本質を突いた内容であると自負している。

前置きはこの辺にして、三つの時間戦略についてお伝えしよう。

 

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1. 人よりも早く始める

人よりも効率的に速く仕事をこなしたいと望む人は多い。それは、時間術としては大切かもしれないが、時間戦略においてはどうでもいい。スピードの差など、取るに足らない小さな差でしかないからだ。それよりも、人より早く始めることのほうがずっと重要なのである。

たとえば、車二台でどこか遠方に出かけたとしよう。一台の車はスピードを上げて走ったとする。危険運転を顧みず車を走らせても、渋滞やSAなどの待ち時間で後車に追いつかれてしまう。後車と差をつけたければ、スピードを上げるよりも1時間早く出発するほうがよい。この1時間早く出発した差は、そうそう埋められない。

これは実生活でも同様だ。人より速く仕事をこなして生まれる時間の差など、たかが知れている。それよりも早く始める。スピードを上げるより、早く仕事に取りかかる。それだけで、他者との差を大きく離すことができる。これは1日単位でも言えるし、年単位でも言える。

習い事を5年前から始めた人と今日から始める人とでは、大きな開きがある。その差を埋めるのは容易ではない。後者は、前者よりも毎日1時間以上の稽古をして、十数年後にようやく追いつく。

「出社が早い人は出世する」なんて話を聞いた人も少なくないだろう。「仕事が速い人が出世する」とはあまり聞かない。早く出社することで、渋滞や満員電車にも巻き込まれずに済み、誰もいないオフィスで集中して仕事もできる。また、人からの評価も高まる。人より早く始めることで、いくつかの副産物の恩恵にもあずかれる。

時間術は「速く」。時間戦略は「早く」。そして、「速く」より「早く」が大事なのだ。これを肝に銘じておこう。

 

 

2. 人よりも長く続ける

何かを始める人は多くいる。しかしそれを10年以上続ける人は、ほんの一握りである。

「長く続ける」。このシンプルな答えが、いかに重要で圧倒的な差を生むことか。小ざかしい時間術では到底及ばない域にあなたを連れて行ってくれる。

大成した人に共通していることは、何か一つを長く続けている点だ。考え方や生活習慣、分野などがどんなに違っていても、「何かを長く続けた」という点だけは共通している。

「石の上にも三年」「辛抱する木に金がなる」の諺があるように、先人たちは続けることの大切さを昔から説いている。
私もこれに倣って、3年を一区切り単位として見ている。3年続ければ人よりも長け、6年続ければ人に教えられ、9年続ければプロになれる。逆説に言うと、9年続けて芽が出なかったらきっぱりと諦める。

長く続けることの恩恵は、自身の成長もあるが、何よりライバルが勝手にいなくなることだ。始める人が1万人いれば、9年続ける人は100人いるかいないか。気づいたら他の人は脱落している。続けてさえいれば、勝手に勝者側になっているのだ。

「早く始めて、長く続ける」。音楽の世界やスポーツの世界で活躍する人は、このシンプルな戦略に則っている。小手先のテクニックでは到底追いつくことはできないのだ。

 

 

3.一つだけに集中する

何かを始めるとき、同時に複数のことを始めない。何かを続けるとき、同時に複数のことを続けない。一つだけに集中して時間を投資する。これが最後の時間戦略だ。

三つの楽器を3年ずつ習うのと、一つの楽器を集中して3年習ってから、他の楽器を習うのとでは、どちらのほうが上達は早いと思うだろうか(トータルで習う時間は同じ)。実は後者である。まずは一つの楽器を集中して習ったほうが、他の楽器の覚えも速くなる。

あなたは、こんな話を聞いたことはないだろうか。「英語が一定レベルまで上達していれば、他の語学を習った際も上達が早い」と。これは、一つの何かを深めると、他の分野(類分野)への応用が利くからである。

「一芸は百芸に通じる」「一芸に秀でる者は多芸に通ず」という諺がある。一つの芸を極めると他の芸の道理も早く分かるようになる、という意味だ。

マルチな才を発揮して活躍する芸能人が稀にいる。お笑い芸人が映画監督になったり、司会者が文筆家になったり。こんな人たちを見ると「『天は二物を与えず』と言うが、二物与えているじゃないか!」と思うかもしれない。しかしこれは、上記の諺で説明がつく。何か一つを極めたからこそ、他の分野でも道理を見抜き、飛躍的な成長を遂げられるのだ。

同じ時間を投資するなら、同時よりも一つずつ投資していく。これが最後の時間戦略である。

 

 

まとめ

「一つのことを早く始めて、長く続ける」。
これが私の提言する“シンプルだが最強の時間戦略”である。

 

 

 

 

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