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斜め45度からの理説

どこにも転がっていない理論や方法論を語ります。

「適材適所」だけでは不十分。「適数適時」も心掛ける

「適材適所」という四字熟語がある。人は、能力や性格に合った仕事を与えられることで最大限のパフォーマンスを発揮する、の意を表わした言葉だ。
確かに、自分に合った仕事が与えられれば、パフォーマンスは向上するだろう。しかし、これは“個”で見た場合の話だ。仕事は集団で行うため、もっと広い視野で見なくてはいけない。その場合、「適材適所」に加え、必要になるものがある。それは、「適数適時」だ。
「適数適時」とは何なのか、説明していこう。

 

 

人手が増えるほど仕事の効率が落ちる

仕事には、仕事量に応じた適切な人数がある。私はそれを「適数」と呼ぶ。この適数を見誤ると仕事は非効率化する。
たとえば、3人で済む仕事を4人で行った場合、仕事時間は短縮するだろうか。答えは、NOである。適切な人数を超えると、3日間で済む仕事が4日かかる場合がある。また、人間関係も複雑になり内輪揉めのリスクも大きくなる。

「シナジー効果(相乗効果)」を一度は聞いたことがあるだろう。これをよく表した比喩が、著書『7つの習慣』に記されている「二つの植物を近づけて植える事で、別々に育てるよりもよく成長する」である。数学的な表現をすれば、「1+1=3」がそうだ。

実は、シナジー効果はプラス面ばかりではない。マイナス面に働くこともある。これをアナジー効果と呼ぶ。「2+2=3」となる現象がそれだ。これが最も発生しやすいのは、「適数」を見誤ったときである。

先ほど述べたように、3人で済む仕事を4人や5人で行えば、早く終わるどころか、かえって長くなり、トラブルも生じやすくなる。


私がこのことに気づいたのは、前職で、旅行やイベントを企画していたときのことだった。企画に関わる人が一定数を超えると、途端に一人一人のパフォーマンスが悪くなることを発見した。サボる人や暇な人が現れ、怠惰感がほかの人にも伝染してしまう。その結果、全体の士気が下がる。余った人手は、かえって邪魔になるだけだった。

時々目にする、「誰でも参画できる企画」は、大概、空中分解する。責任者は「みんなに仕事を与えないといけない」という意味のわからない仕事に追われ、その結果、非効率的で自己満足的な企画が運営される。経営上、往々にして、時間をかけた割には、大して得るものはなかったという結末が待っている。

人手が多過ぎてはアナジー効果を生じてしまう。では、どれぐらいの人数が適切なのか。感覚的な表現になるが、経験上、「ちょっと忙しい」と思えるぐらいの人数が適切だと言える。

「適数」が与える教訓は、“余剰な人手は効率を下げる”である。

 

 

締め切りに余裕を持たせると生産性が落ちる

仕事には、仕事量に応じた適切な時間がある。私はそれを「適時」と呼ぶ。この適時を見誤ると仕事は非生産的になる。

英国の歴史学者シリル・ノースコート・パーキンソンが提唱した、「パーキンソンの法則」の第二法則にもこう記されている。「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」と。この法則はお金で表しているが、時間にも置き換えられる。
つまり、Aの仕事の締め切りが1週間後でも、10日後でも、人は与えられた締め切りに合わせて仕事をしてしまう。締め切りが短ければ集中的に、長ければ無駄な作業を交えながら仕事をする。

あなたも、こんな経験はないだろうか?
締め切り間近な仕事を与えられ、集中して励んだら高クオリティの仕事ができた経験。逆に、「納期は特にありません。時間が空いたときにでも」と言われた仕事ほど、低クオリティになってしまった経験。

締め切りが短ければ、時間当たりのクオリティは向上する。長ければ、時間当たりのクオリティは低下する。最もクオリティが高くなる締め切りを設けることが大切だ。
この事実を別の見方をすれば、“仕事のクオリティには、締め切りが影響している”とも言える。

では、適切な締め切り「適時」は、どれぐらいの時間を指すのだろうか。
感覚的な表現になるが、「少し無理すればできる」~「もしかしたら無理かもしれない」の間がいい。

「適時」は、集団で仕事をするうえにおいても重要だ。
部署や会社全体の期限目標も「少し無理すればできる」~「もしかしたら無理かもしれない」に設定すると生産性の高い仕事ができる。また、少し無理することで能力向上にも繋がる。ゆるい目標にしてしまえば、非生産的な仕事を集団レベルでする羽目になってしまう。

適時が与える教訓は、“プレッシャーのある締め切りは生産性を上げる”である。

 

 

まとめ

「適材適所」は大切だ。しかし、それを殺すも活かすも「適数適時」次第である。「適材適所適数適時」は八字熟語として覚えておきたい。

 

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