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斜め45度からの理説

どこにも転がっていない理論や方法論を語ります。

経営者は、データ分析をする前に現場に足を運べ

「何がどれだけ売れた、売れなかった。では、今度は○○商品に力を入れよう」。このようなデータ分析と対策は、ビジネスをしていれば、当たり前のように目にする。

データは無機質だ。だが、そのデータを生み出している現場は、無機質ではない。人間が汗水を流し、身体と知恵を使って働いている。そのため、データが生まれる現場を知らない人は、真の意味でデータを扱えない。

書籍『1年で駅弁売上を5000万アップさせた パート主婦が明かす奇跡のサービス 』(著者 三浦由紀江)がある。ここには、一人のパートがいかに知恵を絞り売り上げを上げているかが記されている。
1年で駅弁売上を5000万アップさせたパート主婦が明かす奇跡のサービス

1年で駅弁売上を5000万アップさせたパート主婦が明かす奇跡のサービス

 

 

パートが著者というのは珍しい。
ビジネス書の著者は、経営者かコンサルタントが主である。そのためなのか、読者は気づかないうちに経営者視点に偏り、現場視点を忘れてしまう。本書を読み進めていくうちに、自分がいかに経営者視点に偏っていたのかを思い知らされた。

たとえば、こんな一文。

効率よく発注するには、ABC分析が必要だと、机にふんぞり返って偉そうに言う人がいますが、私はデータを分析しただけでは発注業務はうまくいかないと確信しています。

たとえば、データでは連日売り切れしている商品があるとします。
データで判断する人なら、「毎日売れ切れているのだから人気商品だ」と思うでしょう。「もっと売れるはずだ」と、発注数を増やすかもしれません。

でも、現場で売っている人にしてみれば、「本当は売れない商品だけど、仕方なく一生懸命、やっとの思いで売りきっている商品」かもしれないのです。(中略)

私は新幹線ホームの発注を担当している会社スタッフの男性に、「牛肉弁当は売れないよ」と言いました。
「三浦さん、そんなこと言ったって、データ上では売れていますよ。実際、廃棄になっていません」。
「当たり前じゃない! 私が一生懸命売っているんだから。そりゃあ廃棄になっていないでしょう。でもね、毎回牛肉弁当だけが売れ残って回ってくるんだよ。だからこの商品は少なくしてね」(中略)

データはもちろん必要ですが、現場をきちんと見ない限り、販売の本質は見えてこないのです。

 

このように、本書には現場視点の言葉が散りばめられている。

商いは、人と人との営みだ。人がお金と商品を交換する現場にこそ、答えがある。
机の上でデータばかり見ていては、現場の情報は得られない。データはあくまでも情報の一面であり、すべてを反映しているわけではないのだ。

現場を見ずして、体感せずして、ABC分析だの、なんちゃら理論だのは、ただの戯言である。現場と乖離した理論は、現場では活かされない。理屈が正しくても実行されないのだ。

「社長は現場に来ないから分からないけど、実際、現場はいっぱいいっぱいでやっているんだよ。これ以上の仕事を増やされても無理だよ」などと愚痴をこぼす社員は多い。経営者や幹部はそれを聞いて、「現場の怠慢」と言うかもしれない。だが一度、現場のスタッフと一緒に身体を動かしてみるといい。見えなかったものが見えるかもしれないし、何より、現場のスタッフが経営者に対して心を開いてくれる。現場の快諾がなければ、どんな施策も机上の空論で終わってしまう。

現場に足を運ばない経営者は、現実を直視できず、データも見誤り、人の心も離れていく。頭だけで経営をするようになったら終わりだ。
会社が一丸となるには、社長が現場に足を運ぶことから始まるのである。