斜め45度からの理説

どこにも転がっていない理論や方法論を語ります。

ポジティブとネガティブ、どっちが正しい考え方なのか

あなたは、物事をポジティブに考える人だろうか? それとも、ネガティブに考える人だろうか? 今回は、心のあり様や考え方について私の持論を紹介する。


以下の話を聞いたことはないだろうか。

アフリカに靴を売る話 靴を販売する営業マン2人が現地調査をしにアフリカへ行きました。 現地を見て驚いたのは、アフリカ人には靴を履く習慣はなく、「裸足」で生活しています。 それを見た一人の営業マンは、こう報告しました。 「アフリカ人は靴を履いていないので市場はありません・・・」 しかし、もう一人の営業マンは違う報告をしました。 「アフリカ人は誰も靴を履いていないので、市場は無限大です」。

この話は、同じ事実を見ても捉え方一つで解釈が180度変わることを示唆した有名なたとえ話だ。実は私、これと類似した場面に出くわしたことがある。

お風呂の湯を炭酸温泉水に変える機械を販売している会社がある。そこの会社の社長は、アメリカへ商品を販売しようと考えた。社長は帰国子女の社員に考えを伝えた。すると社員は社長にこう進言した。「社長、アメリカにはお風呂に入る習慣はありません。売れませんよ」。社長はこう返しました。「なにを言っているんだお前は。お前はお風呂に入らない生活ができるか。できないだろ。お風呂に入る気持ち良さを知っているからだ。アメリカ人にもそれを教えてやればいい。そうすれば、みんな買うぞ」。冒頭のセールスマンのたとえ話と全く同じだ。

二つの話から私は、「未開拓の市場に打って出るべきだ」とも「物事はポジティブに見ないといけない」とも言いたいわけではない。マーケティングの専門家として言えば、未開拓の市場に打って出る/出ないは、両方とも正論だからだ。確かに、未開拓の市場に受け入れられれば大きい。しかし、未開拓の市場に受け入れられるまでに多大な労力が必要になる。そのまま受け入れられないことだってありえる。また、ポジティブ/ネガティブ論も、どちらが仕事や人生にプラスになるのかは、置かれた環境にもよるため、どちらが正しいとも言えない。

ここで、私の旧友の話をしよう。
彼は、中堅規模の製造業社に派遣社員として勤めていた。彼を含み派遣社員は約100名弱。しかし業績悪化に伴い会社は大量リストラを決行。派遣社員は次々と契約を解除されていった。そんな中、彼は最後まで残り、しかも正社員として採用されたのだ。そんな彼だが、超がつくほどネガティブ。「インターネットって、ウィルスとかあって、おっかないんだろ」と、年寄りみたいなことを言ってパソコンを所有したこともないような人間だ。私は、そんな彼だからこそ正社員になれたのだと思う。仕事で失敗しないように努めたことが功を奏して採用されたのだ。

私は帰省した際に彼と飲み、正社員になったことや勤労を褒め称えた。彼は時々私に向かって、「俺もお前みたいにポジティブになりたいよ」と言う。私は「ならなくていいよ」と返す。なぜなら、ポジティブかネガティブかは、生まれや育ちによって形成された性分であり、性格と経験から最も益のある考え方になっているからだ。それが私の場合たまたまポジティブになり、彼はネガティブになった。それだけのこと。私は、ポジティブを推奨したり啓発したりするのはあまり好きではない。世に蔓延るポジティブ信仰は、ネガティブな人に「ポジティブになったほうがいい。ポジティブじゃない自分はダメだ」といった余計な悩みを増やしているだけだ。意味がない。

未開拓の市場に打って出る/出ないも、ポジティブ/ネガティブも両方とも正論。そのときそのときの状況や諸事情によって、正解は変わる。絶対にこの考え方や方法が正しいということはない。偏り過ぎず、状況に応じて変えられる、そんなバランス感覚が、思考やメンタルにも必要だと私は考える。