斜め45度からの理説

どこにも転がっていない理論や方法論を語ります。

結果重視VSプロセス重視。そろそろ結論を出すか

重視するのは、結果かプロセスか。この論争を、たまに目にする。
私は以前、結果重視派だった。「結果が出るプロセスが正しいプロセス」とさえ思っていた。だが、今は違う。プロセスを重んじるようになった。それは、結果重視の弊害に気づいたからだ。

 

 

結果重視の弊害

結果重視は、結果が大きく早いほど評価される。
たとえば、1億円の投資に対して5億円稼ぐのと10億円稼ぐのとでは、後者が評価される。成果が大きいからだ。また、1年で5億円稼ぐのと、10年で5億円稼ぐのとでは、前者が評価される。結果が早いからだ。投資に対しての成果は大きく。時間に対しての成果は早く。これが、結果重視の考え方と言える。ここまでの話に異論は出ないだろう。

この考え方には、大きな危険が潜んでいる。
たとえば、30年間で100億円稼ぐのと、3年間で100億円稼ぐのとでは、戦略や方法論が全く異なる。時として、未来の益を犠牲にして、目先の益を優先することさえある。

最近の例を挙げれば、横浜で起きたマンション傾斜のデータ偽装問題。これは、業界全体に蔓延していた結果重視の弊害と言える。「納期までにマンションを建てる」という結果を優先したため、「安全性」や「データ」と言ったプロセスを歪曲した。

長期的な視野に立てば、マンション傾斜問題が起きることは自明。そうなれば、自社はもとより、業界自体を揺るがす大問題となる。しかし、誰もこの流れを止めることはできなかった。ある意味、仕方がない。なぜなら、結果重視は必然的に「より安く」「より早く」という考えになり、長期視点には立てないからだ。長期的な視野に立つということ自体、結果思考と相反する。そのため、たとえ間違ったプロセスであったとしても、未来の利益を損なうと分かっていても、目の前の大きな利益が優先されるのだ。

 

 

結果重視の弊害に警鐘を鳴らす

結果を重視するあまり、プロセスを軽視する業界は他にもあるはずだ。こうした結果重視の弊害に対して警鐘を鳴らす見識者も多い。たとえば、分子生物学者・福岡伸一氏。

 

現代人が口にする食べ物って、どこでだれが作って、どういう風に調理され、どういうルートでここにたどり着いたか、まったく見えない。プロセスが見えないというのは、本当にすごく恐ろしいことだと思います。価格だけが唯一の選択基準になると、供給側はありとあらゆる効率化をはかるようになる。その象徴が狂牛病騒動でしょう。幼牛を迅速かつ効率的に大きくするために、草食動物に対して「共食い」を強要したわけですから。(中略)
2~3日で何か起きるような食品は食品衛生法で禁じられていますが、長期的な毒性というのは考慮されていない。(中略)
食の問題を考えていくと、私たちが近視眼的な思考しかしていないことを痛感します。短いスパンでしかものを考えられなくなっている。『プロセスに対する想像力』を取り戻すべきです。
「才能がある人の生活習慣(講談社) 分子生物学者・福岡伸一」

才能がある人の生活習慣 〔セオリービジネス〕2008 vol.1 (セオリーMOOK)

才能がある人の生活習慣 〔セオリービジネス〕2008 vol.1 (セオリーMOOK)

 

 

結果重視が行き過ぎると、手抜きや非人道的な行為が横行し、隠される。しして、いつしか明るみになり、誰かが今までのつけを払う羽目になる。反対に、プロセスを重んじるようになれば、長期に亘り結果が得られ続ける。ここに、プロセス重視を心掛けている経営者がいる。伊那食品工業会長の会長 塚越寛氏である。

 

大切なのは、その会社にあった「最適成長率」を見極めることです。会社の業種や規模、歴史や時代背景、マーケットの変化をはじめ、地球環境、かかわる人々の幸せ、人に迷惑をかけないといった視点まで含めて、総合的に判断して決める必要があります。(中略)
「成長の限界」ということをいつも念頭においています。この限界に至るまでの時間を長くするために、成長を限りなく抑えて、低成長でいくべきだと考え、実行してきました。いつでも適正な成長率を見極めながら進むことが、企業永続の原点だと思います。
「いい会社を作りましょう(文屋社) 著者 塚越寛」

新訂 いい会社をつくりましょう

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驚くなかれ、伊那食品工業はなんと、50年間も連続増収増益を達成しているのである。プロセスを重視した結果、 “長期的”な利益を生み出している。

 

 

最後に

私なりに、結果重視とプロセス重視の特長を書き出すと以下のようになる。

 

結果重視・・・・・短期的・近視眼的

プロセス重視・・・長期的・多角的

 

結果重視を間違った考え方と言うつもりはない。ただ、あまりにも偏りすぎていないだろうか(アメリカの思想や経営学が伝来してきた弊害かも。ボソっ)。日本は元来、長期的な視点に立ち、生活や商いを営んできた。その証拠に、世界で最も老舗が多い。

最後に、二宮尊徳の言葉を引用して締めたいと思う。
「遠きをはかる者は富む」