斜め45度からの理説

どこにも転がっていない理論や方法論を語ります。

私がポジショニング戦略をとらない理由

他社に負けない分野を見つけて特化させる。こうしたポジショニング戦略は、マーケティングにおいて必須とされている。私もコンサルタントの立場から、クライアントへ特定の分野に絞って特化するよう指導し、WEBコンテンツでもそのように述べている。

では私自身、ポジショニング戦略をきっちりしているのかというと、実は、全くしていない。重要性を理解しているにも関わらず、“あえて”していないのだ。

今回は、私がポジショニング戦略を取らない3つの理由について述べたいと思う。

 

 

理由1 独自の理論を否定しないため

私の下には、多種多様な業界から相談が入る。中には「そんな仕事があったのか」と思うような業界からも。多業界から相談が入るのは、ひとえに私が特定の業界に絞っていないからだ。通常、コンサルタントは、何かしらの業種か手段に絞って特化させている。

たとえば、「サロン専門のコンサルタント」「Youtubeコンサルタント」など。最近は、さらに細分化が進み、両方をかけ合わせたものが多い(例「サロン専門のYoutubeコンサルタント」とか)。

私は業種・手段のいずれにも絞っていない。そのため、多業界から多様な相談が入り、それらすべてに答えている。「その業界は分からない」と言って断ったことは一度もない。

なぜ私は、業界・手段を絞らず、すべての相談に答えられるのか。
まず、業種を絞らない理由に、私の提唱するマーケティング理論がある。詳しい説明は割愛するが、私の理論は、業種に関係なく普遍的に応用できるものだ。クライアントの相談にも、当然その理論を用いている。つまり、私が業種を絞ることは、自身の理論の否定に繋がる。

人が消費をする背景には、必ず欲求がある。欲求が生まれるメカニズムは、相手が人間である限り同じである。業種・国籍・時代を問わない。顧客と商品をマッチングさせるための手段(アプローチ)が異なるだけだ。これも、私の理論を用いることで適切な手段が見えてくる。

この話の流れから、二つ目の理由について語りたい。

 

 

理由2 相応しい手段の提案をするため

先ほど、消費のメカニズムは業種を問わず、手段だけが異なると述べた。ここに、私が手段を絞らない理由がある。

たとえば私が、Youtubeコンサルタントだとしよう。
サロンから相談が入ったら、「Youtubeがいいですよ」。
歯科医から相談が入ったら、「Youtubeが来ています‼」
中古車屋から相談が入ったら「Youtubeしましょう」
と言う羽目になる。

手段を絞れば、それを推すか、推さないかの二択になる。良心的なコンサルタントなら「あなたの業界に合いませんよ」と教えてくれるかもしれない。

私は、提案できる手段が一つしかない、または、限られるのが嫌なのだ。クライアントに合わせて、最も適した手段を提案して、方法論まで教えたい。

最近読んだ『ない仕事の作り方』(著者 みうらじゅん)にこんな一節がある。

なぜひとつのことに特化しなかったのか? その理由は、やりたいことによって、漫画にするのか、イラストにするのか、エッセイにするのか、歌にするのか、イベントにするのか、テレビ番組にするのか、それぞれに「相応しいツール」を選んできたからにすぎません。

「ない仕事」の作り方 (文春e-book)

「ない仕事」の作り方 (文春e-book)

 

 

私の場合でも置きかえられる。
なぜひとつのことに特化しないのか? その理由は、クライアント(課題)によって、DMにするのか、WEBにするのか、メルマガにするのか、プレスリリースにするのか、雑誌広告にするのか、ジョイントにするのか、それぞれに「相応しい手段」を選びたいからにすぎない。

 

 

理由3 「全体」の理解なくして「部分」の特化はあり得ないため

私は常々疑問である。全体の理解なくして、なぜ、部分に特化できるのか。

WEBマーケティングを例に挙げよう。
私はPPC広告を出稿した経験のない者のSEO理論なんて聞きたくない。PPC広告を出稿した経験のあるコンサルタントは決まって、「まずはPPCから始めてください」と指導する。SEOから始めるのは、非効率だと知っているからだ。このように、全体を知らずに部分に特化させると、必ず歪みが起きる。抽象度をもっと上げれば、そもそもその企業は、WEBマーケティングから始めるべきかどうか、とも考えることができる。もしかしたら、アナログ手段のほうが効果的かもしれない。

これはマーケティングに限った話ではない。営業でも同じだ。
たとえば、営業経験が無い人がアポイント業務に特化すると、アポを取ることに意識が向いてしまう。「それでいいのではないか」と思うかもしれないが、それでは駄目なのだ。大切なのは「見込み度の高いお客のアポイント」であり、ただアポを取るだけでは、商談に行く者に余計な労力やコストをかけさせてしまう。

全体を理解することは、部分に特化する際極めて重要な知見となる。「全体を理解して、はじめて部分の特化が可能になる」と私は考えている。

以上、三つの理由から、私はマーケティングのセオリーであるポジショニング戦略をほぼ放棄している。

誤解しないでほしいのは、ポジショニング戦略を否定しているわけではない。他社に負けない分野に絞って特化させるのは、マーケティング上、間違いなく正解である。私は特殊な事例だと思ってほしい。

 

 

最後に

ポジショニング戦略については、かなり葛藤した。「しない」という選択が、苦難の道を選ぶことだと知っていたからだ。今でも「正解」だったのかと問われれば、YESとは答えられない。だが、これだけは言える。
自分は苦難の道を選んだのと同時に、最も“面白き道”を選んだのだと。

 

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おまけ

私と同様にポジショニング戦略を“あえて”とっていないコンサルタントがいる。竹内謙礼氏だ。勝手に親近感を覚えている。

小さな会社こそ、高く売りなさい

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