斜め45度からの理説

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書籍との比較から見えてくる、情報商材の作り方・売り方

先日、知人からこんな質問を受けた。
「情報商材って、今後どうなると思いますか?」。

通常のコンサルティングでは、こんな質問は出てこない。私が相手をする人たちは、もうすでに商材を持っているか、これから作ろうとする人たちばかりだからだ。利害関係のない知人だからこそ、出てきた素朴な疑問だ。

先の質問に対して、私はこう答えた。
「おそらく今後も残る」。

念のために補足しておくが、情報商材とは、広義で言えば書籍や音楽CDも含まれる。ただ、知人が指しているのは、WEB上で数千円や数万円で販売されている、俗に言う「情報商材」のことだ。

ご存知の通り、情報商材は怪しさプンプンである。そんな“怪しい商材(業界)”としてレッテルが貼られているものが、なぜ今後も残ると思うのか。その理由を説明するには、情報商材とはそもそも何なのかについて解説しておく必要がある。

 

 

情報商材は、書籍と対比させるとよく分かる

対象物を明確にするには、何かと対比させるとよい。情報商材を語るうえで、最も適した対象物は書籍である。
書籍も情報商材も、活字を通じて「情報」を売っている。ここは、大きな共通点だ。だが、価格が10倍以上も違う。なぜ、こうも違うのか。その理由を説明しよう。
注)情報商材の中には、活字だけでなく、音声や動画を扱っている場合もあるが、便宜上、ここでは活字のみを前提とする。

 

 

書籍がカバーできないマーケット

書籍と情報商材は、カバーしているマーケットが違う。
出版社から「初版が売れる見込みがない」と相手にされず、しかし、情報を求めている人たちが一定数いるニッチなマーケット。ここが情報商材のマーケットである。書籍が流通しないため、情報を渇望している。そのため、ニッチに特化した専門性の高い情報は、高値でも売れる。これが、情報商材のそもそもの成り立ちでもある。

書籍と情報商材の収益性を比較してみよう。
まずは出版の場合。仮に、初版部数が5,000部、価格は1,500円、印税は10%として、初版部数が完売すれば75万円が収入となる。続いて情報商材の場合。仮に、15,000円の情報商材を作ったとして、500部売れれば、750万円が収入となる。厳密には、広告費などもかかるため、そのまま収益になることはないが、収益性の高さは理解していただけただろう。しかも、在庫は必要ないため、リスクはほぼゼロである。つまり、情報商材ならニッチマーケットでも十分収益が出せるといわけだ。

これがいつしか、「情報商材は儲かる」と独り歩きし始めた。そして、書籍のマーケットに情報商材を投入する人たちが急増した。その結果どうなったか。書籍との差別化を中身(情報)でするのではなく、「セールスコピーの力」でするようになり、被害者が続出した。

もう一度言う。情報商材とは、書籍のマーケット(マス)から外れたニッチがマーケットである。そこに、専門性の高い情報を提供するからこそ、高価格でも販売ができるのだ。そして、これがそもそもの成り立ちである。

それでも、「いや、私のノウハウは書籍にするにはもったいない。情報商材で大きく儲けたい」と言うのであれば、続きを読んでほしい。書籍とマーケットが重なる場合でも情報商材を売ってもよい条件を3つお教えしよう。この3つの条件は、情報商材が今後も残り続ける理由でもある。

 

 

書籍のマーケットで情報商材を売る3つの条件

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条件1 どの書籍にも記述がない情報

情報商材を作りたいのなら、何かテーマがあるはずだ。まずは、そのテーマと重なる書籍を過去10年分購入することだ。時代性が大きく影響する情報(たとえば、SEO関連)であれば、ここ3年間に出版された書籍をすべて購入すること。もしかしたら、50冊以上になるかもしれないし、100冊以上になるかも知れない。何十冊、何百冊になろうが、それらすべてに目を通すこと。

目を通したうえで、「自分のノウハウは、どの書籍にも記述されていない」と判断したのであれば、商材化してもいいだろう。だが、間違っても、誰かが既に述べている情報や情報の寄せ集めを販売してはいけない。多少、内容が被るのは仕方がない。だが、基盤となる着想や情報には、独自性や新規性がなければならない。

この話を聞いて、「大変そう」と感じただろうか。もし、これが大変だと感じたのなら、あなたはかなり認識が甘い。書籍のマーケットに売り込むということは、書籍が競合になることを意味している。当然、競合を調べ上げて、どこにもない独自の価値を提供する必要がある。これが「商品を開発する」ということである。他の業界では、当たり前に行われていることだ。

ただ残念なことに、情報商材屋はこの努力をほとんどしない。情報商材は、「ラクして儲かる」手段だと思っているからだ。そうした輩が作る商材は、大抵“クソみたいな商材”になる。ラクしたいのだから、競合調査や商品開発に心血を注ぐわけがない。

私が経験した例を一つ挙げよう。
とある方から「節税に関する情報商材を作ったので、LPを作って欲しい」との相談があった。私は「無理だと思いますけれど、とりあえず商材を見せてください」とお願いして、商材を送ってもらった。一通り目を通した後、私は事務所にある一冊の書籍を手に取り、依頼者にメールを送った。「1,200円の書籍に、あなたが書いている内容以上のことが書かれていますよ。書籍名は……」と。「節税」というマーケットに情報商材が付け入る隙はない。あるとすれば「脱税」だ。

情報商材を作りたいのであれば、競合調査をはじめ、商品開発に努めることだ。それをしたうえで、独自性のある情報だと判断すれば、売り出せばよい。今まで誰も述べていない役に立つ情報であれば、購入者は価値を認めてくれるはずだ。

 

 

条件2 書籍には収まりきらない情報量

書籍に記述できる情報量には限界がある。特別な場合を除き、250ページ前後が基本となる。もし、あなたが提供するノウハウが250ページには収まりきらない情報量であれば、情報商材にしてもいい。テーマによっては、「基本概要」「マニュアル書」「事例集」「参考データ」「Q&A」などを作って分類したほうがよい。購入者が読みやすく、理解もしやすいからだ。

実は、この分類が書籍にはできない。一冊に製本しなくてはいけないという縛りがあるからだ。つまり、懇切丁寧に説明するつもりで、いくつもの書類を作れば、必然的に書籍との差別化が図れるという訳だ。同じ理由で、活字だけではなく、音声や動画をセットにしてもよい。

情報量について誤解がないよう、私の失敗談を話しておこう。
情報商材がまだ黎明期だったころ、私はある商材を購入した。LPには、「数百ページにも及ぶ情報です」と書かれ、バインダーにぎっしりと紙が詰まった写真まで載せられていた。これは結構な情報量なのだと思い購入。蓋(PDFファイル)を開けてみると、一行書いて、改行、改行、改行、また一行書いて、改行、改行、改行。A4用紙1ページに書かれている情報量は、おそらく200文字前後。そんなスカスカなA4用紙をプリントアウトしながら私は、「Shit‼ 無駄に紙だけ使わせやがって。紙切れしたじゃねーか」と叫んだ。

私は先ほど「250ページには収まりきらない情報量であれば、情報商材にしてもよい」と述べた。情報商材を売ろうとする人は、どういう訳か変な解釈をする人もいるため、念のために一言添えておく。
250ページを文字数に換算すれば15万文字以上だからな。ページ数だけ多ければいいってもんじゃないからな。間違っても、改行ばかりしてページ数を水増しすればいいって話じゃないからな。

 

 

条件3 情報商材とサポートのセット販売

情報商材の多くは、「行動を伴うノウハウ」である。そのため、知識(ノウハウ)だけを得ても、行動をしなければ意味がない。しかし多くの人は、なかなか行動をしない。お金を払って情報を得て、それで満足してしまう。こうした人たちに、はじめの一歩を踏み出してもらうためにも、サポートを一緒に販売するのがいいだろう。

サポートの例を挙げよう。
「電話やスカイプによる相談権」「購入者しか入れないSNS」「購入者しか閲覧できない最新のコンテンツ」など。こうしたサポートも販売することで、単に「情報」を売る立場から、「変化」を売る立場へと移れる。これは書籍にはできない大きな違いだ。

サポートを付けるメリットは、書籍との差別化だけではない。まず、購入者の満足度が上がる。次に、商材制作者の責任感が増す。サポートで購入者の生の声を聞くため、下手な商材は売れなくなるからだ。最後は、購入者からの届いた意見を元に、商材のバージョンアップが可能になる。質問や不満点を反映すれば、より完成度の高い商材が完成するはずだ。

特にサポートに向いているのが、情勢や環境がめまぐるしく動く業界である。たとえば、「PPCの管理画面」や「SEO環境」などがそれにあたる。1年で情報が古くなるような業界であれば、サポートへのニーズは高いはずだ。

 

 

まとめ

3つの条件のいずれかを満たせば、書籍と差別化ができ、情報商材として成り立つだろう。とはいえ、情報商材を取り巻く環境は険しくなる一方だ。Amazonが提供する電子書籍やオンデマンドプログラム、そのほかにも、手軽にコンテンツが販売できるメディア(方法)も増えてきているからだ(たとえば、note)。
最盛期のように、高値での販売や、数が掃けたりはしないだろう。だがそれでも、情報商材は姿かたちを変えて残り続けるだろう。人が情報を発することを止めない限りは。

 

 

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