斜め45度からの理説

どこにも転がっていない理論や方法論を語ります。

文章作成に必要なものは「文章力」ではない

今回は、「文章作成」について、ショウペンハウエル氏の言葉を借りながら綴っていきたいと思う。

読書について 他二篇 (岩波文庫)

読書について 他二篇 (岩波文庫)

 

 


では、始めから核心を突く言葉を紹介しよう。

「賢くあることが正しい文章作成の源泉である。」(p62)

ごもっとも。
誤解している方も多いが、いい文章を書くために必要なのは文章力ではなく、思考力である。

文章力とは、思考内容を文字に正しく出力する力を指す。そもそも思考内容が陳腐であれば、どんなに出力(文章力)が上手でも陳腐な内容の文章しか出てこない。文章力は一定レベルあればいい。それよりも大切なのは思考力であり、これが文章に大きな差をもたらす。


続いて、この一文を紹介しよう。

ものの書き方が不明瞭、もしくは拙劣であるということは、考えが曖昧であるか、もしくは混乱しているかのいずれかであるということである。(p63)

先ほどの話と重複するが、「文章が不明瞭だな」「なんだか稚拙だな」と感じたとき、安易に「文章力が足りないのか」と帰結するのは危険だ。そういう場合もあるだろうが、大抵は文章力ではなく、思考力の乏しさが原因だったりする。論理的に文章が書けないのは、論理的な文章の書き方を知らないのではなく、論理的に思考することができていないためかもしれない。ここを見誤ると無駄な努力をする羽目になる。


続く一文は、思考力の中でもとりわけ重要な要素を示している。

二つの異なったケースに表われている同一の状態を把握するかぎり、私はその状態一般について一つの概念を持ち、したがってより深い知、より完全な知を所有する。(中略)
すぐれた比喩を見せてくれる人は、明らかに深い理解力の持ち主である。(中略)
また彼の次の言葉も同じ意味のことを言ったものである。「哲学において、まったく相反した事物の中に共通の類似点を把握するのは、鋭い洞察力の業である。」(Rhetorica,ⅠⅠⅠ,11)(p120)

これは、類推思考(アナロジー思考)を指している。
異なった二つの事象から類似性を見つけて、核心や本質を見出す思考法だ。この類推思考ができれば、比喩表現が豊かになるだけではなく、深い洞察力を持って世界を見ることができる。これは論理思考とは違った思考力だ。類推思考については、以前こちらの記事にも記述しているため、ここでは割愛する。

 

では、続いての一文。

なげやり調にものを書くのは、自分の思想にあまり価値をおいていないことを、初めから告白しているようなものである。自分の思想が重要な真理を含んでいると確信してさえいれば、感激の情が自然にわきあがる。それは普通、神殿や貴重な芸術品、金銀の器などにのみおぼえるような感激である。そうなると、明瞭な美しい表現、力強い表現に心がけて、ねばり強く、辛抱強く書かなければ承知できなくなるのである。 (p108)

非常に共感できる。
私も自身の言葉には細心の注意を払い紡ぐようにしている。数ヶ月前に書いた記事を読み直しては校正することもある。

ブログマーケティングの命題の一つに、「ブログ記事は、量か質か」がある。とりわけ、自社の商品販売や来店を促すためにブログを書いているのであれば、私は質を優先するべきだと考えている。もちろん、質の高い記事を毎日書けるのであれば、それに越したことはないが、ほぼ不可能である。なぜなら、ほかの業務の合間を縫って、質の高いブログ記事を毎日書くことはそうそうできないからだ。

ではなぜ私は、「質」を優先させるのか。その理由は、ブログ記事に会社の思想が表われるからである。ショウペンハウエル氏が言うように、思想が重要な真理を含んでいると確信していれば、明瞭で力強い表現を心がけて辛抱強く書こうとするはずだ。正しく伝えたい想いや思想があるならば、適当に記事が書けるはずがない。それができるということは、単に「儲かればいい」という考えだけでビジネスをしていることを暗に告白しているのと同じだ。


私の師匠である小阪裕司氏の書籍『自分らしく稼ぐ』にこんな一文がある。

あなたはなぜ今のビジネスをやっているのか? その問いへの答えがなければ、ビジネスはただの集金活動になってしまう。

自分らしく稼ぐ。

自分らしく稼ぐ。

 

 

ブログは、この問いの答えを知らず知らずのうちに映し出している。ブログを読めば、その会社にしっかりと根を張った思想があるかどうかが透けて見えてくる。

思想もなく、集金活動の一環としてブログを運営している者は、記事を一筆書きできるだろうし、他人に執筆の委託もできるだろう。このやり方は集金活動としては理にかなっており、特にブロガ―やアフィリエイタ―との相性がいい。集金活動に重きを置く在り方を批判する気はない。それも一つの生き方だし、一つの解でもある。


では、この一文を紹介して終わりにしよう

無知は富と結びついて初めて人間の品位を落とす。(p127)

含蓄のある言葉だ。
前後にある文言も含めて、何度も読み返して理解したいと思う。

 

  

 

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