斜め45度からの理説

どこにも転がっていない理論や方法論を語ります。

20年後の君へ ~仕事がない時代をどう生き抜くのか~

ニート問題、就職難、低所得化など、日本経済は暗欝としている。
仕事が少なく、たとえ就職できても低賃金だったり、長時間労働を強いられたりする。日本では、「ブラック企業」などという言葉まで生まれた。経済不安を抱えているのは日本だけではない。他の先進国も同じだ。

なぜ、世界の経済は衰退したのか。なぜ、仕事がなくなったのか。その根本的な原因は『技術の発展』にある。

私たちは、仕事を減らすために仕事をしてきたと言える。
手作業だった仕事を自動に、人がしていた計算をコンピューターに、と。効率化を図るため、日々技術の発展に努め、商品・サービスを開発してきた。そのお陰もあって、私たちの生活や仕事は、便利で快適なものとなった。もう昔の生活には戻れない。それほどの恩恵を受けている。
ありがたく思える『技術の発展』だが、ありがたい話ばかりではない。私たちの経済不安の根源は、まさにここにあるのである。

 

 

20年後には今の仕事の半分がなくなる

オックスフォード大学マーティンスクールが面白い調査レポートを発表した。題は「コンピューター(ロボット化)の影響を受けやすい未来の仕事」。レポートには、20年間で雇用の半分は、ロボットやコンピューターに代替されると記されています。
※レポートの詳細はこちら。

レポートの予想通り、20年後には仕事の半分を機械が代替するかもしれないし、あるいは30年後かもしれない。どちらにしろ時間の問題だ。私たちがしている今の仕事は、いつかは人ではなく機械がするのだ。

機械化の未来を彷彿とさせる内容の書かれた書籍がある。『ワーク・デザイン』(著者 長沼博之)だ。
とても示唆に富んでいるため、一部引用しよう。

ルンバを開発したアメリカのロボット工学者、ロドニー・ブルックスが、2012年、新たに「バクスター」という産業ロボットを開発した。
バクスターは、ラインから流れてくる製品の箱詰めや、製造ラインへの部品を適当に流すといった作業をこなすロボットだ。世界が驚いた最大の特徴は、「感じる力」と「見る力」を持っていることで、人間の脳のように的確な「理解」ができる点だ。つまり、仕事を教える際も、人間がバクスターの手を動かしながら覚えさせる、というやり方が可能なのだ。
(中略)
バクスターが行うことができる作業は、現在80万人の人々が担っており、その市場規模は160億ドルにも上る。これはただ事ではない。

 

本書には、他にも事例が書かれている。

米サンフランシスコのモメンタム・マシン社は、2013年1月ハンバーガーを1時間に360個作ることができるロボット「アルファ」を開発したと発表した。
(中略)
このロボットを導入することで人件費の大幅カットが実現でき、それによって原材料費に2倍のコストをかけられるようになることが、何よりも革命的である。
(中略)
モメンタム・マシン社によると、さほどスペースもとらず、コストは短期間で回収できるという。これが事実であれば、業界構造を変えてしまうほどの可能性を持っている事が容易に想像できるだろう。

ワーク・デザイン これからの〈働き方の設計図〉

ワーク・デザイン これからの〈働き方の設計図〉

 

 

「バクスター」「アルファ」のいずれも導入コストは安く、投資回収が短期間で済む。1日中働かせることもでき、福利厚生もいらない。当然、労働基準監督署に訴えられることもない。単純作業はもちろん、職人仕事もすべてロボットに代替されてしまうのだ。

話を日本に移そう。
最新のテクノロジーを取り入れたホテル経営を試みようとしている経営者がいる。株式会社エイチ・アイ・エスの澤田秀雄会長だ。
建設中の「スマートホテル」は、客室が約100あるにもかかわらず、常住する従業員数はたったの一人。掃除や接客はすべてロボット、電気は太陽光や磁力を活用。最大限にコストを抑えて、宿泊費を3人で5,000円にする計画だ。

時代はもうここまで来ている。
どれだけの仕事が機械に奪われるのだろうか。いや、「奪われる」という認識は本来おかしいのかもしれない。機械が人間の代わりに仕事をしてくれているのだ。私たちはラクをしたいがために、技術の発展を図り効率化を進めてきたのだから。
だが、その先にある現実を目の当たりにしたとき、私たちは気づいた。気づいてしまったのだ。効率化を図り仕事は減らすことは、自らの手で自らの首を絞めているのと同じだということに。

 

 

それでも、時代の流れは止まらない

技術の発展は仕事を効率化してくれた。しかしそれは同時に、私たちの働き口を減らしている。労働者が減れば社会にお金が回らない。不景気になるのは当然だ。

政府は経済を活性化させようとあらゆる手段を講じるだろうが、焼け石に水だ。時代の趨勢は止められない。どう足掻こうとも、技術の発展による働き口の減少は避けられないのだ。

今後も、あらゆる産業で労働資源は失われていく。中には、消滅する産業も現れるだろう。冒頭に話したように、20年後には今の雇用の50%は失われるかもしれない。そういう局面に私たちは立ち合っている。

では、我々はこの時代をどう生き抜けばいいのか。
その答えの道しるべになる書籍がある。『一生食える「強み」の作り方』(著者 堀場秀雄)だ。

一生食える「強み」のつくり方

一生食える「強み」のつくり方

 

 

 

プロスキルではなくプチスキルを持つ

本書の主張を私なりに要約すると次のようになる。
「1万時間かけて身に付けるプロスキルではなく、2500時間かけて身に付けるプチスキルを複数持とう。そして、専門業を一つだけ営むのではなく、複数の業(複業)をしよう。そのほうが今の時代に適している」。

先ほどから話してきた通り、どんな業種であれ、遅かれ早かれ仕事は機械に代替される。業界自体がなくなるリスクもある。そんな中、一つの業界にしか精通しないスキルだけでは、業界がなくなったとき、立ち回れなくなってしまう。それはあまりにも危険だ。
そこで、一つのプロスキルを有するよりも、複数のプチスキルを有するほうがリスクは分散でき、立ち回りもしやすい。
また本書では、プチスキルの掛け合わせ(シナジー)によって『レア人材』にもなりうるとも記している。

私もこの考え方に賛同する。
今までは専門性を高めてブランディングを行うのがセオリーな戦略だった。それは、競争する相手が「人間」だったからだ。人間同士の競争はもう終わった。これからは機械と人間との競争なのだ。そして、機械は信じられないスピードで日々成長している。

昔は、コンピューターとプロ棋士が将棋勝負をしても、コンピューターは勝てなかった。しかし今は、プロ棋士を打ち負かしている。

厳しい現実だが受け止めざるを得ない。私たち人間は、機械には勝てないのだ。今仕事ができているのは、単に機械が不向きな仕事か魔の手が伸びていなかったに過ぎない。時間の問題で、仕事は必ず機械に奪われる。今私たちができる戦略と言えば、リスクの分散を行うことぐらいだろう。

 

 

2年毎に新規事業を作る

1983年に経済紙『日経ビジネス』が「会社の寿命は30年」という記事を発表した。それが16年後の1999年になると、「会社の寿命は5年」と発表した。

今後、会社の寿命は短くなることはあっても長くなることはないだろう。私は一つの事業の寿命を2年と決めている。もちろん、事業によっては寿命が長いものもあるだろう。あくまでも心積り程度で受け止めてほしい。2年だと思って取り組んでいたほうが無難なのだ。

私自身も新しい事業を考えている。
私はコンサル業をしているが、コンサルタントを続けるつもりはない。というより、コンサル業自体がこの世から消えるとさえ思っている。
今までの10年間よりも、これからの10年間のほうが何倍も速く進む。そんな時代において、「30年先のビジョン」などと悠長なことは言っていられない。長期ビジョンという考え方は、一昔前の産物と化したのだ。

 

 

まとめ

今、私たちは時代の転換期にいる。
このまま機械化が進めば、私たちは働き口を失い、経済は立ち行かなくなる。新しい社会システムや価値観を生まなくてはならない。世界がどのような方向に行くのかは私には分からない。これは予測するものではなく、私を含む人類全体で答えを見つけ出さなくてはならない課題なのだ。
20年後の私たちは、一体どんな答えを導き出しているのだろうか。