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斜め45度からの理説

どこにも転がっていない理論や方法論を語ります。

マーケティング理論には、「顧客中心」と「商品中心」の2種類がある

私が提唱するマーケティング理論の一つに、「顧客中心マーケティング」がある。この理論を広く伝えようと、私は自社のWEBサイトを通じて情報発信している。
今回、初めて耳にする人もいるかもしれない。改めて本ブログでも「顧客中心マーケティング」について解説したい。

 

 

商売の原則に基づくマーケティング理論

顧客中心マーケティングの概念を端的に言えば、「お客の欲しがるものをすべて売る」というものだ。
たとえば、ランニングシューズを買いに来たお客には、ランニングに関わる商品(ウェアや心拍計)も売る。婚活サービスを受けたお客には、その後に消費するであろうブライダル関係のサービスを売るなり、事業者と提携して紹介などをする。このように、「業界」や「何屋」といった垣根を越えて、お客の欲求や行動に合わせて商品を展開していくというものだ。

「顧客中心マーケティング」は、商売の原則が基になっている。商売の原則とは、「お客の欲しがっているもの(顕在的欲求)、お客の欲しがるもの(潜在的欲求)を売る」である。そこに「業界」や「何屋」といった垣根は一切関係ない。

おそらく、今の話をはじめて聞く人は、首をかしげるかもしれない。巷で伝えられているマーケティング理論とは大きく異なるからだ。一般的に知られているマーケティング理論は、「一つの業界に精通して、他社に負けない得意分野(特色)を見出し、業界内NO1になる。これが最も効果的である」と言われている。業界内の競合にいかに差別化して勝つかが肝要とされているのだ。

私は、従来のマーケティング理論や戦略を否定する気はない。これはこれで正しい答えの一つだ。私が提唱する「顧客中心マーケティング」は、マーケティングのもう一つの答えとして提示しているにすぎない。

顧客中心マーケティングは、私一人だけが提唱しているものかといえば、そうではない。私のほかにも、同じ視座に立ち、理論を提唱している人たちがいる。その一人を紹介しよう。

 

 

マーケティングの専門家が伝える業界の呪縛

マーケティング学者 セオドア・レビット氏が50年前に発表した論文『マーケティング近視眼』は、私の理論に通ずる。レビット氏の主張を簡潔に講釈している書籍『ノヤン先生のマーケティング学』の一文を紹介しよう。

日本の道路を走っている車の90%以上は、任意保険に加入しておるんじゃ。そしてその加入タイミングで一番多いのは、もちろん車を購入した時じゃ。つまり、保険販売のタイミングに誰よりも近くにいるのは、車を販売した系列カーディーラーなんじゃよ。

では、自動車メーカーやその関連会社が国内大手の損害保険会社になっているかと言うと、そうではないんじゃ。自動車保険の大手は、船舶や海上貨物の火災を扱っていた保険会社なんじゃよ。海上保険というやつじゃな。社名と違って、現在の彼らの収入源は圧倒的に自動車保険なんじゃ。

なぜ自動車メーカーやその販売代理店であるカーディーラーは、最大手の保険会社に進化できずに代理店に留まっているんじゃろうな?

ワシはこの理由をマーケティグ近視眼だと考えておるんじゃ。彼らは自分たちを自動車製造会社、自動車販売会社と定義したんじゃ。一方、自動車を購入する人にとって、車の購入は目的ではなく手段なんじゃよ。目的は家族でのドライブや通勤、幼稚園の送り迎え、営業車として購入したならば、顧客訪問や社内拠点の輸送になるんじゃ。そしてその目的において、保険は絶対に必要なものなんじゃ。だから本来は車とセットで販売されるものじゃし、自動車産業から最大手の保険会社が出てもなんの不思議もなかったはずなんじゃ。同様に、自動車メーカーやディーラーの中から、中古車販売ネットワークやタイヤ販売会社の最大手が現れなかった理由も、彼らの定義によるものなんじゃ。

ノヤン先生のマーケティング学

ノヤン先生のマーケティング学

 

 

この文では、「自分たちは車(新車)を売る者」と定義してしまったため、保険や中古車を売る機会を失っていることに警鐘を鳴らしている。なぜこのようになったのか。それは、業界に自分たちを当てはめたからだ。自分たちは「自動車業界」「車屋」であると。そのため、お客が次に必ず欲しがる保険を積極的に売ろうとしなかったのだ。

もう一人紹介しよう。
ダイレクト・レスポンス・マーケティングの世界的権威 ダン・ケネディ。彼に関する書籍『ダン・ケネディから学ぶ 「稼ぐ社長」の作り方』から一文を紹介する。

我々はマーケッターです。「たまたま」今の商品を扱っているにすぎません。顧客を獲得して、顧客を維持する。これだけです。

そもそもマーケッターには「業界」なんて考え方はありません。なぜなら「業界」というのは、商品中心の考え方だからです。家を売っているから住宅業界、車を売っているから自動車業界、家電を売っているから家電業界、etc……。

忘れてはいけません。我々は「たまたまこの商品を扱うマーケティング屋さん」です。顧客を獲得して維持するためには、人間の行動心理を知らなければなりません。人間の行動心理には、業界なんてものはありません。

ダン・ケネディから学ぶ 「稼ぐ社長」の作り方

ダン・ケネディから学ぶ 「稼ぐ社長」の作り方

 

 

マーケティングとは本来、お客を中心に考えるべきである。ひいては、商品もお客の欲求や行動に合わせて売るべきである。消費の源泉はお客にあるのだから、当然だろう。
しかし、自分たちを「業界」という枠に嵌めてしまうと、もうそれができない。ダン・ケネディが言うように「業界」とは、商品中心の考え方であり、一旦この考え方に陥ると中々抜け出せないのだ。そうなると当然、業界以外のものを売ろうとしない、いや、そもそも業界以外の商品を売ろうなどと考えもしないのだ。これは、商品思考がもたらす呪縛である。

マーケティングは、「誰に何を売るのか」と、お客中心で思考するべきである。しかし、先に述べたように、商品中心で思考した場合、「何を誰に売るのか」となってしまう。前者の「誰に何を」と、後者の「何を誰に」は全く別次元の視点であることにお気づきだろうか。前者は、お客を決めてから売る商品を選んでいる。しかし後者は、商品を決めてからお客を選んでいるのだ。私は、前者を「顧客中心マーケティング」と呼び、後者を「商品中心マーケティング」と呼んでいる。

まだ腑に落ちない人もいるだろう。そこで、私の師匠の書籍から一つの事例を紹介したい。

 

 

商品思考の呪縛、マーケティング近視眼を超えて

私のバイブルの一つである「招客招福の法則」から事例を一つ紹介しよう。

私は常々「会社に収益をもたらすのは商品ではなくお客」と考えている。換言すれば、商売の基盤は商品ではなく顧客名簿だということだ。かばん屋で言えば、かばんをいかにたくさん売るかと考えることよりも、顧客名簿からいかに収益を上げるかと考えることが大切だ。そのためには、売るものはときにかばんでなくてもいい。

しかしここに心理的なハードルがある。多くの商人は自社の主な取扱商品に縛られる傾向があり、かばん屋はかばん意外売ってはいけないと思いがちだ。(中略)

私の知るこのかばん屋店主も、当初はかばん意外の商品を売ることに抵抗があった。またたとえば自店で洋服を扱うと近所の洋服屋さんから冷たくされ、付き合いづらくなるとの心配もあった。

しかし彼女は気づいた。自店を好きで付き合ってくれる顧客とて、毎月かばんばかり買えはしない。また考えてみると、女性は1シーズンにかばんはたいがい1個しか買わないが、服は何着でも買う。その分自店の顧客も他店で買ったり、どこで買えばいいのかわからず買い物をしたくてもできないでいるのだと。そこで彼女は本腰を入れて洋服を売ることにした。(中略)

結果をいえばこのイベント、先の4日間は140万円、次の4日間も同程度の売り上げとなり、小さな町のかばん屋のイベントとしては大成功だった。

招客招福の法則―儲けの王道がみえる88の話

招客招福の法則―儲けの王道がみえる88の話

 

 

私はこうした事例を数多く知っている。
こうした事例とは、業界の垣根を越えて商品を販売して成功した事例だ。業界に関わるものでしか売れない、売ってはいけないというのは、売り手側の勝手に思い込みである。お客は、あなたが何業界なのか、何屋なのかなんて考えてもいない。それよりも、「自分の欲しいものはこの会社(お店)にあるのか、ないのか」のほうがずっと大事なのだ。

まだまだ事例を見たい人は、以下のリンク先を見てほしい。私のWEBサイトで事例をいくつか紹介している。

ブライダル業界の事例に見る、顧客中心マーケティング

Amazonの成功の裏には、顧客中心主義がある

レストランで成功したら、次はモーテルを始める

 

 

まとめ

改めて言おう。商売の原則とは、「お客の欲しがっているもの(顕在的欲求)、お客の欲しがるもの(潜在的欲求)を売る」である。これに基づいたマーケティング理論を「顧客中心マーケティング」と言う。これは、私一人が提唱しているのではなく、マーケティングの先端を行く人たちはみな気づいている、気づき始めている理論なのだ。
お客の欲求や行動に合わせて商品を提案する。そこに業界などという煩わしい概念は不要なのである。