夏休みの過ごし方(宿題のやり方)は、人生の縮図である
子どもなら、誰しも心を弾ませた「夏休み」。
だが一つだけ、楽しみに水を差す存在があった。「夏休みの宿題」だ。
夏休みの宿題をどう処理するのかには、大きく分けて3通りある。
1,夏休みの前半で片付けて、後半思いっきり遊ぶ。
2,計画を立てて、毎日少しずつ終わらせていく。
3,夏休みの後半でまとめてやる。(または計画を通りにできなかった結果)
まぁ、多くの人は3ではないだろうか。
「夏休みの過ごし方(宿題のやり方)は、人生の縮図である」と言われたら、あなたはどう思うだろうか? 「あぁ、言われてみればそうかも」と思った人もいるだろう。今回は、「夏休みの過ごし方が、生き方にも表れる」といった話をしていきたい。色々と覚悟して読んでほしい。
自制心が社会的成功を左右する
有名な心理学の実験に『マシュマロ実験』がある。
被験者は186人の4歳児。椅子と机だけが置いてある部屋に通される。机の上には、マシュマロがひとつだけ入ったお皿が置いてあり、実験者は被験者にこう伝える。
「私はちょっと用がある。それはキミにあげるけど、私が戻ってくるまで15分間食べるのを我慢したら、マシュマロをもうひとつあげる。私がいない間にそれを食べたら、ふたつ目はなしだよ」。そう言い残し、部屋を出ていく。
その後、子どもたちを追跡した。
15分間我慢できた子は、我慢できなかった子よりも大学進学適性試験(SAT)の点数が平均210ポイント高く、社会的成功を収めやすいことが分かった。つまり、自制心が強い子ほど社会的成功を収めやすいわけだ。
追試でも同様な結果が出たが、新たに判明したこともある。それは、自制心は育った経済環境に大きく左右されるということだ。
自制心の陰にあるのは、「現在バイアス」
パチンコや宝くじに興じる人らがいる。
そんな彼らを「バカが税金を余分に払っている」と一蹴するのは簡単だ。だが、生まれ育った経済環境の影響で自制心が育っていないせいなのかもしれない。
自制心が弱ければ、長期的な利得よりも短期的な利得に走ってしまう。また、経済環境が恵まれていない人間は、未来について考える思考の余力がなくなり、リスクを犯して一発逆転を狙う傾向があることも分かっている。経済環境は、現在そして未来の行動に多大な影響を与えるのだ。
「自制心」といった言葉を使ってきたが、行動経済学(または心理学)では「現在バイアス」とも呼ぶ。言葉の用法は若干異なるが、ほぼ同じことを指している。
「現在バイアス」は、目の前の利得を過大評価し、未来のリスクを過小評価してしまう心の癖だ(または、未来の喜びよりも目の前の喜びを優先してしまう心の癖を言う)。
たとえば、喫煙者は「現在バイアス」が働いている行動だ。喫煙は未来の健康を犠牲にすると知っているが、目先の快楽を優先している。ほかにも、ダイエット中にケーキの誘惑に負けてしまうのも、現在バイアスによるものだ。
現在バイアスを実感してもらう質問をしよう。
「今すぐに1万円をもらえる」のと「1年後、1万1,000円もらえる」のとでは、あなたはどちらを選ぶだろうか。
類似した行動経済学の実験では、前者を選ぶ人が多かった。少し考えれば、後者は年利10%という優良提案なのだが、それを蹴ってでも、利得をすぐに手に入れたいと考えてしまうのだ。さて、あなたはどちらを選んだかな。
後者を選んだあなたは、経済的に余裕があるのかも知れない。お金に関する「現在バイアス」は、置かれている経済環境によっても発露の仕方が異なるからだ。
生活に困っている人は、今すぐにでも1万円がほしいが、裕福な人は別に今すぐ1万円をもらわなくても構わない。こうした心の余裕が、日々の生活行動や人生設計に大きな影響を与える。富める者はますます富み、貧しいものはますます貧しくなっていく。
「現在バイアス」がよく表れるのは、夏休みの宿題
「現在バイアス」を強く実感するのが、今回のテーマである「夏休みの宿題」だ。
宿題を先にやっておけば、心置きなく残りの休みを楽しめるのに、目の前にある自由な時間に心を奪われてしまい、宿題を後回しにしてしまう。あなたも経験があるだろう。
社会派ブロガーのちきりんさんが、こんなことを言っていた。
子供の頃、「小学生の時に、夏休みの宿題がギリギリまで終わらなかった人は、一生すべてがギリギリまで終わらない」と言われたのを思い出した。ほんと、そのとおりだ。あの頃すでに、すべてが決まってたんだな。
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2012年4月25日
行動経済学的に見ても的確な指摘だ。個人的には、マシュマロではなく、夏休みの過ごし方別で、子どもたちを追跡調査したほうがすっと有益な情報が得られると思っている。
夏休みの宿題を先にやれる子は、偏差値の高い大学へ進学し、社会的地位も高い傾向にあるはずだ。逆に後回しにした子は、社会的地位を収めにくいだろう。
研究では、夏休みの宿題の後回しと、肥満、ギャンブル依存、喫煙、飲酒、離婚、残業などには相関があるとされている。
ちなみに私は、小学低学年の頃は最終日に徹夜して宿題をし、高学年の頃は友達と分業した。中学校に入ってからは、ゲームカセットと引き換えに友だちに宿題をやってもらっていた。行き当たりばったりに生き、悪知恵を使ってどうにか生きている今と同じ構図だ。
まさに、夏休みの過ごし方は人生の縮図なのである。
私は27歳です。周りがどんどん結婚したり家庭を持ち始めてます。喜ばしいなとは思いますが、周りと比べて落ち込む事はしません。夏休みの宿題は早めに終わらせる子どもでした。20代でお金の問題という、人生の宿題をさっさと解決して、30代40代ストレスなく幸せに暮らしたい。だからこそ今頑張ります。
— えいりか@冒険する小学校教員 (@nerikeshibanana) 2022年3月5日
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